iDeCo+は、会社が掛金を足しても合計は月23,000円まで。対象は企業年金のない300人以下の会社。未経験がiDeCoを始める前に確かめる3つの手順
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iDeCo+(イデコプラス)は、会社が従業員のiDeCoの掛金に上乗せしてくれる制度だ。正式には中小事業主掛金納付制度といい、厚生労働省の案内では、企業年金を実施していない従業員300人以下の会社だけが使える。上乗せと聞くと、自分の掛金に会社の分が足されて枠が広がるように思える。ところが、会社の分と自分の分を合わせた合計は月5,000円以上23,000円以下と決まっていて、会社が出すほど自分が出せる分は小さくなる。自分はまだiDeCoを始めていないので、勤め先が対象になるかを確かめる手順を、厚生労働省の表を開いて3つに分けた。

iDeCo+は、会社がiDeCoに掛金を足す制度
iDeCoは、自分で口座を開いて自分の掛金を積み立てる個人型の年金だ。iDeCo+はその仕組みの上に、会社が掛金を足す形をとる。会社が新しく別の年金制度を作るのではなく、従業員がすでに入っているiDeCoに会社の分を乗せる、という順番になっている。
厚生労働省の「iDeCo+のご案内(事業主向け)」には、制度の中身が1枚の表にまとまっている。そこから項目を書き写した。
| 項目 | 厚生労働省の表の内容 |
|---|---|
| 使える会社 | 企業年金を実施していない従業員300人以下の事業主 |
| 労使の合意 | 会社が掛金を出すとき、金額を変えるときに必要 |
| 上乗せの対象 | iDeCoに入っている従業員のうち、会社の掛金に同意した人 |
| 掛金の額 | 会社と本人の合計で月5,000円以上23,000円以下、それぞれ1,000円単位 |
| 納付 | 会社の分と本人の分を会社がまとめて納める |
| 税金 | 会社の掛金は全額損金、本人の掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除) |
倉庫の仕事でいえば、自分の荷物を積んだトラックに、会社の荷物も一緒に載せて出す形だ。トラックは1台で、荷台の大きさは決まっている。この荷台の大きさが、あとで出てくる23,000円という合計の上限にあたる。
対象は、企業年金のない300人以下の会社

表の1行目にある「企業年金」は、注記によると企業型確定拠出年金、確定給付企業年金、厚生年金基金の3つを指す。このどれかをすでに実施している会社は、iDeCo+を使えない。会社に年金の仕組みがない人のための、上乗せの手段という位置づけだ。
もう1つの条件の「300人」には、2つ注意がある。1つは、2020年10月にそれまでの100人以下から300人以下へ広げられたこと。古い記事やパンフレットで100人と書かれていたら、そこで止めずに日付を見る。もう1つは、ここでいう従業員が厚生年金の被保険者を指すことだ。パートで厚生年金に入っていない人は数に入らない。
自分の勤め先は物流の会社で、倉庫ごとに人数が違う。拠点ごとではなく会社全体で数えるのか、という疑問も出てくるが、そこは事業主の側で確かめる話になる。従業員の自分ができるのは、会社が対象になりうるかの見当をつけるところまでだと思う。
合計23,000円の中で、会社と自分が分け合う
未経験がいちばん間違えやすいのが、この合計の考え方だ。iDeCo+の掛金は、会社の分と自分の分を足して月5,000円以上23,000円以下になるよう、それぞれ1,000円単位で決める。会社の分は、自分のiDeCoの枠の外に足されるのではなく、同じ23,000円の中に入る。
仮の数字で、合計の内訳を3通り書いてみた。どれも会社と自分の合計が上限の23,000円以内に収まっている。
| 仮のケース | 会社の掛金 | 自分の掛金 | 合計(月) | 自分の掛金の年額 |
|---|---|---|---|---|
| A 上乗せなし | 0円 | 23,000円 | 23,000円 | 276,000円 |
| B 会社が3,000円 | 3,000円 | 20,000円 | 23,000円 | 240,000円 |
| C 会社が3,000円・自分は少なめ | 3,000円 | 7,000円 | 10,000円 | 84,000円 |
ケースAとBを比べると、どちらも毎月23,000円が積み立てられる。違いは、Bのほうが自分の財布から出る額が月3,000円、年36,000円少ないことだ。その代わり、所得控除になる自分の掛金も年36,000円小さくなる。上乗せは、枠を広げてくれる制度ではなく、枠の中の一部を会社が持ってくれる制度だと読める。
手順1 勤め先に企業年金があるかを見る

最初の手順は、勤め先に企業年金があるかどうかを確かめることだ。自分は就業規則の退職金の章と、入社したときにもらった福利厚生の案内を見るところから始める。企業型確定拠出年金や確定給付企業年金があれば、そこに名前が書いてあるはずだ。
もし企業年金があれば、iDeCo+は使えないので、この稽古はここで終わる。代わりに、その企業年金のほうの説明を読む番になる。企業年金がなく、会社の規模が300人以下に当たりそうなら、次の手順に進む。
就業規則で見つからないときは、給与明細の控除の欄も見る。企業型確定拠出年金で自分も掛金を出す仕組みがあれば、控除の欄にその名前が並ぶことがある。会社が全額を出す形だと明細には出ないこともあるので、最後は総務や人事に一言聞くのが確実だ。聞くときは「iDeCo+はありますか」より先に「企業年金はありますか」と聞くと、話が早いと思う。
手順2 合計と内訳を自分の数字で書く
2つ目の手順は、もし会社が上乗せしてくれたら、毎月いくらを自分が出すかを書いてみることだ。自分は新NISAのつみたてを毎月10日に3万円で続けている。iDeCoを足すなら、つみたての3万円とは別に、いくらまで出せるかを先に決める。
決めた額が月1万円なら、会社が3,000円を出す場合の自分の分は7,000円になる。上の表のケースCだ。自分の財布から出るのは7,000円でも、積み立てられるのは1万円になる。ここで大事なのは、自分の分を先に決め、会社の分はそこに足されるかどうかを確かめる順番にすることだ。会社の分が決まってから自分の分を逆算すると、つみたての3万円まで削りたくなる。
もう1つ、会社の掛金は自分の所得控除にはならない。表の税金の行にあるとおり、所得控除になるのは本人の掛金だけで、会社の掛金は会社の損金として扱われる。ケースCなら、所得控除の対象は自分の7,000円の12か月分、84,000円だけだ。手取りへの効き目を見積もるときは、合計の1万円ではなく自分の掛金の年額を使う。ここを取り違えると、税金が戻る額を多めに数えてしまう。
手順3 自分がiDeCoに入っていることが前提

最後の手順は、順番の確認だ。厚生労働省の表では、会社が掛金を出す相手は「iDeCoに加入している従業員のうち、事業主掛金を拠出することに同意した者」と書かれている。つまり、自分がiDeCoに入っていなければ、会社が上乗せする先がない。
自分はまだiDeCoを始めていないので、iDeCo+があっても今のままでは何も起きない。会社に制度があるかを聞く前に、自分がiDeCoを始めるかどうかを決めるほうが先になる。iDeCoは原則60歳まで引き出せないお金なので、つみたての3万円を崩さずに出せる額かどうかを、手順2の表で確かめてから決めたい。
倉庫に入ったばかりのころ、休憩室で先輩に「荷台は1台。誰の荷物をどれだけ載せるかを先に決めろ」と言われた。iDeCo+も同じで、会社の荷物が増えれば自分の荷物を載せる場所は減る。上乗せという言葉に引っぱられず、合計23,000円の荷台の中で、自分の分をいくら載せるかを先に決めるのが、未経験の自分にできる稽古だと思う。
- 厚生労働省「iDeCo+のご案内(事業主向け)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000194195.html
- 国民年金基金連合会「iDeCo公式サイト」 https://www.ideco-koushiki.jp/