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師範 大地(30代・元物流現場職)

口座開設から最初の1本、積立を止めないまで

つみたて実践

iDeCo+は、会社が掛金を足しても合計は月23,000円まで。対象は企業年金のない300人以下の会社。未経験がiDeCoを始める前に確かめる3つの手順

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執筆:大地公開:カテゴリ:つみたて実践

倉庫に積み重ねられた平たい段ボールの断面
倉庫に積み重ねられた平たい段ボールの断面

iDeCo+(イデコプラス)は、会社が従業員のiDeCoの掛金に上乗せしてくれる制度だ。正式には中小事業主掛金納付制度といい、厚生労働省の案内では、企業年金を実施していない従業員300人以下の会社だけが使える。上乗せと聞くと、自分の掛金に会社の分が足されて枠が広がるように思える。ところが、会社の分と自分の分を合わせた合計は月5,000円以上23,000円以下と決まっていて、会社が出すほど自分が出せる分は小さくなる。自分はまだiDeCoを始めていないので、勤め先が対象になるかを確かめる手順を、厚生労働省の表を開いて3つに分けた。

小さい会社のビルのイラスト

iDeCo+は、会社がiDeCoに掛金を足す制度

iDeCoは、自分で口座を開いて自分の掛金を積み立てる個人型の年金だ。iDeCo+はその仕組みの上に、会社が掛金を足す形をとる。会社が新しく別の年金制度を作るのではなく、従業員がすでに入っているiDeCoに会社の分を乗せる、という順番になっている。

厚生労働省の「iDeCo+のご案内(事業主向け)」には、制度の中身が1枚の表にまとまっている。そこから項目を書き写した。

項目厚生労働省の表の内容
使える会社企業年金を実施していない従業員300人以下の事業主
労使の合意会社が掛金を出すとき、金額を変えるときに必要
上乗せの対象iDeCoに入っている従業員のうち、会社の掛金に同意した人
掛金の額会社と本人の合計で月5,000円以上23,000円以下、それぞれ1,000円単位
納付会社の分と本人の分を会社がまとめて納める
税金会社の掛金は全額損金、本人の掛金は全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)

倉庫の仕事でいえば、自分の荷物を積んだトラックに、会社の荷物も一緒に載せて出す形だ。トラックは1台で、荷台の大きさは決まっている。この荷台の大きさが、あとで出てくる23,000円という合計の上限にあたる。

対象は、企業年金のない300人以下の会社

納屋の倉庫のイラスト

表の1行目にある「企業年金」は、注記によると企業型確定拠出年金、確定給付企業年金、厚生年金基金の3つを指す。このどれかをすでに実施している会社は、iDeCo+を使えない。会社に年金の仕組みがない人のための、上乗せの手段という位置づけだ。

もう1つの条件の「300人」には、2つ注意がある。1つは、2020年10月にそれまでの100人以下から300人以下へ広げられたこと。古い記事やパンフレットで100人と書かれていたら、そこで止めずに日付を見る。もう1つは、ここでいう従業員が厚生年金の被保険者を指すことだ。パートで厚生年金に入っていない人は数に入らない。

自分の勤め先は物流の会社で、倉庫ごとに人数が違う。拠点ごとではなく会社全体で数えるのか、という疑問も出てくるが、そこは事業主の側で確かめる話になる。従業員の自分ができるのは、会社が対象になりうるかの見当をつけるところまでだと思う。

合計23,000円の中で、会社と自分が分け合う

未経験がいちばん間違えやすいのが、この合計の考え方だ。iDeCo+の掛金は、会社の分と自分の分を足して月5,000円以上23,000円以下になるよう、それぞれ1,000円単位で決める。会社の分は、自分のiDeCoの枠の外に足されるのではなく、同じ23,000円の中に入る。

仮の数字で、合計の内訳を3通り書いてみた。どれも会社と自分の合計が上限の23,000円以内に収まっている。

仮のケース会社の掛金自分の掛金合計(月)自分の掛金の年額
A 上乗せなし0円23,000円23,000円276,000円
B 会社が3,000円3,000円20,000円23,000円240,000円
C 会社が3,000円・自分は少なめ3,000円7,000円10,000円84,000円

ケースAとBを比べると、どちらも毎月23,000円が積み立てられる。違いは、Bのほうが自分の財布から出る額が月3,000円、年36,000円少ないことだ。その代わり、所得控除になる自分の掛金も年36,000円小さくなる。上乗せは、枠を広げてくれる制度ではなく、枠の中の一部を会社が持ってくれる制度だと読める。

手順1 勤め先に企業年金があるかを見る

倉庫で使うリーチリフトのイラスト

最初の手順は、勤め先に企業年金があるかどうかを確かめることだ。自分は就業規則の退職金の章と、入社したときにもらった福利厚生の案内を見るところから始める。企業型確定拠出年金や確定給付企業年金があれば、そこに名前が書いてあるはずだ。

もし企業年金があれば、iDeCo+は使えないので、この稽古はここで終わる。代わりに、その企業年金のほうの説明を読む番になる。企業年金がなく、会社の規模が300人以下に当たりそうなら、次の手順に進む。

就業規則で見つからないときは、給与明細の控除の欄も見る。企業型確定拠出年金で自分も掛金を出す仕組みがあれば、控除の欄にその名前が並ぶことがある。会社が全額を出す形だと明細には出ないこともあるので、最後は総務や人事に一言聞くのが確実だ。聞くときは「iDeCo+はありますか」より先に「企業年金はありますか」と聞くと、話が早いと思う。

手順2 合計と内訳を自分の数字で書く

2つ目の手順は、もし会社が上乗せしてくれたら、毎月いくらを自分が出すかを書いてみることだ。自分は新NISAのつみたてを毎月10日に3万円で続けている。iDeCoを足すなら、つみたての3万円とは別に、いくらまで出せるかを先に決める。

決めた額が月1万円なら、会社が3,000円を出す場合の自分の分は7,000円になる。上の表のケースCだ。自分の財布から出るのは7,000円でも、積み立てられるのは1万円になる。ここで大事なのは、自分の分を先に決め、会社の分はそこに足されるかどうかを確かめる順番にすることだ。会社の分が決まってから自分の分を逆算すると、つみたての3万円まで削りたくなる。

もう1つ、会社の掛金は自分の所得控除にはならない。表の税金の行にあるとおり、所得控除になるのは本人の掛金だけで、会社の掛金は会社の損金として扱われる。ケースCなら、所得控除の対象は自分の7,000円の12か月分、84,000円だけだ。手取りへの効き目を見積もるときは、合計の1万円ではなく自分の掛金の年額を使う。ここを取り違えると、税金が戻る額を多めに数えてしまう。

手順3 自分がiDeCoに入っていることが前提

中身の詰まったフレコンバッグのイラスト

最後の手順は、順番の確認だ。厚生労働省の表では、会社が掛金を出す相手は「iDeCoに加入している従業員のうち、事業主掛金を拠出することに同意した者」と書かれている。つまり、自分がiDeCoに入っていなければ、会社が上乗せする先がない。

自分はまだiDeCoを始めていないので、iDeCo+があっても今のままでは何も起きない。会社に制度があるかを聞く前に、自分がiDeCoを始めるかどうかを決めるほうが先になる。iDeCoは原則60歳まで引き出せないお金なので、つみたての3万円を崩さずに出せる額かどうかを、手順2の表で確かめてから決めたい。

倉庫に入ったばかりのころ、休憩室で先輩に「荷台は1台。誰の荷物をどれだけ載せるかを先に決めろ」と言われた。iDeCo+も同じで、会社の荷物が増えれば自分の荷物を載せる場所は減る。上乗せという言葉に引っぱられず、合計23,000円の荷台の中で、自分の分をいくら載せるかを先に決めるのが、未経験の自分にできる稽古だと思う。

本記事は2026年10月時点の厚生労働省の公開情報と筆者の経験に基づく一般的な情報提供であり、特定の金融商品の勧誘・推奨ではありません。表の掛金の内訳は制度の仕組みを示すための仮の数字です。掛金の上限や対象となる事業主の要件は、今後の制度改正で変わることがあります。iDeCoの資産は原則60歳まで引き出せません。iDeCoで運用する投資信託等は元本割れすることがあります。勤め先が対象になるかは事業主に、最新の内容は厚生労働省・iDeCo公式サイトでご確認ください。
出典

大地 30代。物流倉庫の現場で12年。2年前に未経験から新NISAを始めた。数字は金融庁の資料と目論見書で確かめてから書く。

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