iDeCoを始めた年は、ふるさと納税の上限が下がる。月1万円の掛金で約3,000円、総務省の式で測り直す3つの手順
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iDeCoの掛金は、その年に払った全額が所得から差し引かれる。国税庁のタックスアンサーNo.1135では「小規模企業共済等掛金控除」と呼ばれる控除だ。所得が下がれば住民税の所得割額も下がり、ふるさと納税で自己負担2,000円に収まる上限も一緒に下がる。総務省のふるさと納税ポータルにある計算式で、自分が月1万円のiDeCoを始めた場合を計算すると、上限はおよそ3,000円下がった。倉庫で12年、ひとつの棚の数字を動かすと隣の棚の在庫表もずれるのを何度も見てきた自分が、iDeCoを始めた年にふるさと納税の上限を測り直す手順をまとめる。

iDeCoの掛金は、全額が所得から引かれる
iDeCoは、自分で掛金を出して投資信託などで運用する個人型の確定拠出年金だ。国税庁のNo.1135によると、確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象で、控除できる金額は「その年に支払った掛金の全額」になる。会社員なら年末調整で、自営業なら確定申告で差し引く。
所得から差し引かれるので、所得税も住民税も下がる。ここまでは、iDeCoの案内でよく見る話だ。自分が見落としかけたのは、その次の段だった。住民税の所得割額が下がると、ふるさと納税で全額控除になる寄附の上限も下がる。片方の数字を動かすと、もう片方の在庫表もずれる。
新NISAには、この影響がない。NISAで買った投資信託の利益は非課税だが、買付の額が所得から差し引かれるわけではないからだ。同じ「投資信託を積み立てる口座」でも、税金の表に出てくる場所が違う。
ふるさと納税の控除は、3つの段で決まる

総務省のふるさと納税ポータル「税金の控除について」には、控除の額が3つの式で書かれている。表に写すと次のとおりだ。
| 控除の段 | 計算式(総務省) | 上限など |
|---|---|---|
| (1) 所得税 | (寄附額−2,000円)×所得税の税率 | 総所得金額等の40%まで |
| (2) 住民税の基本分 | (寄附額−2,000円)×10% | 総所得金額等の30%まで |
| (3) 住民税の特例分 | (寄附額−2,000円)×(100%−10%−所得税の税率) | 住民税所得割額の2割まで |
3つを足すと、2,000円を引いた残りの全額になる。所得税の税率は、2037年(令和19年)中の寄附までは復興特別所得税を加えた率で計算する。国税庁の所得税の速算表(No.2260)では、課税される所得金額が195万円から329万9,000円までなら10%なので、実際には10.21%を使う。
倉庫でいえば、1つの荷物を3つの棚に分けて入れるようなものだ。(1)と(2)の棚は寄附額に合わせて広がるが、(3)の棚には決まった大きさの枠がある。
上限を決めているのは、住民税所得割額の2割
その枠が、住民税所得割額の2割だ。総務省のページは、(3)の特例分が住民税所得割額の2割を超える場合、特例分は「住民税所得割額×20%」で打ち切られると書いている。そうなると3つを合計しても寄附額から2,000円を引いた全額が控除されず、実質の負担は2,000円を超える。
つまり、自己負担2,000円で済む寄附の上限は、住民税所得割額で決まる。住民税所得割額は、住民税の課税所得におおむね10%を掛けた額だ。iDeCoの掛金で課税所得が下がると、所得割額が下がり、2割の枠も小さくなる。
棚の大きさが変わったのに、去年と同じ量の荷物を入れれば、はみ出る。はみ出た分は、寄附しても控除されない自己負担になる。
手順1 月1万円のiDeCoで、上限がどれだけ下がるか計算する

自分で計算してみた。掛金は月1万円、1年で12万円とする。住民税の所得割の税率を10%とすると、課税所得が12万円下がり、所得割額は1万2,000円下がる。その2割なので、特例分の枠は2,400円小さくなる。
次に、枠が2,400円小さくなると、寄附の上限がいくら下がるかを出す。特例分は(寄附額−2,000円)×(100%−10%−所得税の税率)なので、所得税の税率で割り戻す。
| 所得税の税率(復興税込み) | 特例分に掛ける割合 | 上限の下がり幅(年12万円の掛金) |
|---|---|---|
| 5%(5.105%) | 84.895% | 約2,800円 |
| 10%(10.21%) | 79.79% | 約3,000円 |
| 20%(20.42%) | 69.58% | 約3,400円 |
2,400円÷0.7979で約3,008円になる。税率が高いほど、下がり幅は大きい。数字だけ見れば小さいが、上限ぎりぎりまで寄附する人なら、この3,000円がそのまま自己負担に変わる。なお、この計算は住民税の人的控除差調整額などを省いた目安で、iDeCoの控除で所得税の税率の段が変わる人は結果も変わる。
手順2 始めた月から、その年の掛金を数える
No.1135の控除額は「その年に支払った掛金の全額」だ。1月から12月までに実際に引き落とされた掛金で数える。だから、iDeCoを始めた年は12か月分にならないことが多い。
たとえば10月に最初の掛金が引き落とされた人は、その年の掛金は10月から12月の3か月分、月1万円なら3万円になる。同じ計算をすると、所得割額は3,000円、2割の枠は600円下がり、所得税率10%の人の上限は約750円下がる。翌年からは12か月分になるので、下がり幅は約3,000円に広がる。
自分の場合、いちばん間違えやすいのはここだと思っている。申し込んだ月と、最初に引き落とされる月がずれることがあるので、加入した金融機関の画面で引落しの履歴を見てから数える。
手順3 年末前に、寄附の額を測り直す

ふるさと納税は、その年の1月1日から12月31日までの寄附が、その年の所得の控除に入る。iDeCoを始めた年に去年の上限をそのまま使うと、はみ出る可能性がある。自分がやる順番は次のとおりだ。
- 去年の源泉徴収票から、給与所得控除後の金額と所得控除の額を写す
- 今年のiDeCoの掛金を、引落しの履歴で月数ごとに足す
- 増えた掛金の分だけ所得控除を増やして、住民税所得割額の2割を出し直す
- 総務省の式で上限を計算し、去年との差を見る
具体的な計算は住んでいる市区町村に問い合わせてほしい、と総務省のページにも書いてある。ただ、自治体によっては上限の額そのものは答えられない場合がある、とも書いてある。最後は自分で測るしかない。自分は、計算に使った数字と式を、手帳の1ページにまとめて書いておくことにしている。翌年に掛金を変えたとき、どの行を直せばいいかがすぐ分かるからだ。
自分が上限の計算でやらないと決めたこと
調べた結果、自分は次の3つを決めた。
- iDeCoを始めた年や掛金を増やした年は、去年の上限をそのまま使わない
- 上限ぎりぎりまで寄附しない。計算の誤差を考えて、出した上限から数千円は余らせる
- ワンストップ特例を使う年も、上限は同じ式で測る。特例を使うと所得税からの控除がなくなり、その分も翌年度の住民税から引かれるだけで、上限が広がるわけではない
未経験のころ、自分は税金の控除を1つずつ別の話だと思っていた。実際には、同じ所得の表から順に差し引いていくので、1つ動かせば下の段の数字が全部ずれる。倉庫の棚卸しと同じで、どこを動かしたかを先に書き出しておくと、年末に慌てずに済む。
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト「税金の控除について」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
- 国税庁 タックスアンサーNo.1135「小規模企業共済等掛金控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1135.htm
- 国税庁 タックスアンサーNo.2260「所得税の税率」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm