暗号資産の決まりは金商法へ引っ越した。2026年7月15日成立の改正で、無登録業者の罰則は拘禁刑3年から10年に。未経験が説明資料から読む4つの柱
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暗号資産のルールが、2026年7月15日に成立した法律で大きく変わった。金融庁が4月10日に国会へ出した「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」で、暗号資産の取引の決まりを資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移す。金融庁の説明資料によると、株などの有価証券とは別の金融商品として金商法に置き、無登録業者への罰則を拘禁刑3年から10年に引き上げ、インサイダー取引の規制を新しく作る。同じ資料には、国内の暗号資産の口座開設数が1,400万を超え、利用者の約7割が年収700万円未満だとも書いてある。自分は暗号資産を持っていないが、投資信託を始める前の自分と同じ立場の人が増えていると受け取った。この記事では、説明資料を順に読んで、未経験が知っておくことを整理する。

暗号資産の決まりが、別の法律へ引っ越した
これまで暗号資産は、資金決済法という法律で決まりが作られていた。資金決済法は、プリペイドカードやステーブルコインのような「支払いの手段」を扱う法律だ。金融庁の説明資料は、暗号資産は決済手段の観点で規制されてきたが、足もとでは投資の対象になっている、と書いている。
そこで今回の改正で、暗号資産の取引の決まりを金商法へ移した。金商法は、株式や投資信託、FXのようなデリバティブ取引を扱う法律だ。ただし暗号資産は株と同じ「有価証券」にはせず、別の金融商品として置き、その性質に合わせた規制をかける。

倉庫の仕事でいえば、荷物の保管場所を、日用品の棚から精密機器の棚へ移したようなものだと思う。精密機器の棚には、検品の手順も、出し入れの記録も、鍵の管理も、日用品より細かい決まりがある。荷物の中身は同じでも、置かれた棚の決まりが変わる。
変わるのは4つの柱
説明資料は、改正の中身を4つにまとめている。自分が読んだ順に表にした。
| 柱 | 主な中身 |
|---|---|
| ①無登録業者への対応 | 罰則の引き上げ、証券取引等監視委員会の調査対象に追加、裁判所の緊急差止命令 |
| ②情報公表の規制 | 取扱業者と発行者が、暗号資産の情報を事前に公表する |
| ③業者への規制の強化 | 名称を「暗号資産取引業者」に変更、流出に備えた責任準備金の積み立て |
| ④不公正取引の規制 | インサイダー取引の規制を新しく作る |
今の金商法でも、暗号資産について相場操縦などは禁止されていた。ただ、インサイダー取引を直接取り締まる規定はなかった。資料は、海外の規制の動きを踏まえて、公表前の重要な事実を知る立場の人が売り買いすることを禁止する、と書いている。株と同じ考え方を、暗号資産にも当てはめる形だ。
無登録業者の罰則は、拘禁刑3年から10年へ
未経験に一番関係があるのは、①の無登録業者への対応だと思う。説明資料には、金融庁などに詐欺的な投資勧誘の相談が多く寄せられていること、投資セミナーやオンラインサロンで詐欺が疑われる例もあることが書かれている。
罰則は、資金決済法の拘禁刑3年から、金商法の拘禁刑10年の対象になる。金商法の側も、今回の改正で5年から10年へ引き上げられている。あわせて、お金をもらって売り買いの意見を言う場合には、お金をもらっていることを示す義務ができ、いわゆるステルスマーケティングも規制の対象になった。
倉庫に出入りする業者には、必ず入館証を見せてもらう。入館証のない人が「いい荷物がある」と声をかけてきても、荷物は受け取らない。暗号資産の取引も同じで、相手が登録を受けた業者かどうかを、取引の前に確かめる。
業者と発行者に、情報を先に出す義務
②の情報公表は、暗号資産の中身を投資する人に見えるようにする決まりだ。資料によると、ホワイトペーパーと呼ばれる説明資料の中身があいまいだったり、書いてある内容と実際のプログラムが違ったりすることが多い、という指摘があった。
そこで、取引業者は暗号資産を扱う前に、その暗号資産の情報を公表しなければならなくなる。発行者がいる暗号資産(資料では「特定暗号資産」)を発行者が売り出す時は、発行者も事前に情報を出す。監査法人などの財務監査を受けていない発行者の売り出しには、投資できる額に上限を設ける予定で、資料は株式投資型クラウドファンディングと同じく、50万円を超える場合は収入か純資産の5%まで(上限200万円)という目安を挙げている。細かい中身は、これから政令や内閣府令で決まる。
流出に備える積立金と、ネットにつながない保管
③の業者への規制では、預かった暗号資産の守り方が細かくなる。今の決まりにある「原則コールドウォレットで管理する」という安全管理の規制は、金商法にも同じように置かれる。コールドウォレットは、秘密鍵をインターネットにつながっていない機器で管理する方法だ。

新しく加わるのが責任準備金だ。不正な流出が起きた時に、利用者へ補償するためのお金を業者が積み立てておく。どれだけ積むかは、預かっている暗号資産の残高とセキュリティの水準に応じて、内閣府令で決める予定だという。

資料には、詐欺的な勧誘の支払いに暗号資産が使われるのを防ぐため、新しく口座を作った直後は外部のウォレットへ移せない「熟慮期間」を設ける例も挙がっている。倉庫でいえば、初めての取引先への出荷は、伝票が確定するまで保留の棚に置いておくのと似ている。
手順 未経験が今やっておく3つ
自分がこの改正を読んで、やっておこうと思ったのは次の3つだ。
- 取引する業者が、金融庁の登録一覧に載っているかを確かめる。勧誘してきた相手の名前で検索するのではなく、登録一覧から業者名を探す
- お金をもらって意見を言う人には表示の義務ができたので、SNSやセミナーで「上がる」と言う人がいたら、まずその表示があるかを見る
- 税金の扱いは今回の法律とは別で、変わるかどうかは税制改正で決まる。いつから変わるかは、国税庁や財務省の発表で確かめる
休憩室で先輩に「仮想通貨は簡単に儲かるらしい」と言われたことがある。今回の資料を読んで思ったのは、決まりが細かくなるのは値段が上がる約束ではなく、守る仕組みが増えるということだ。値段が大きく動くことは変わらないので、自分はつみたての月3万円とは別の話として扱う。
- 金融庁「国会提出法案等(第221回国会)」 https://www.fsa.go.jp/common/diet/index.html
- 金融庁「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案 説明資料」(2026年4月) https://www.fsa.go.jp/common/diet/221/02/03.pdf
- 金融庁「暗号資産交換業者登録一覧」 https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kasoutuka.pdf